【相談対応Q&A】皆の前で褒めないで

公開日時:2022-10-28 19:15:03  
カテゴリ:事例/その他

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第104回のテーマは「皆の前で褒めないで」。

褒められることで目立ちたくない

 最近、ネットの記事やテレビ等で今回のタイトルである「皆の前で褒めないで…」というテーマを扱っているものが複数ありました。保護者はこういったものが話題になると影響を受けがちです。今回のテーマは「皆の前で褒めないで…」としたいと思います。

 「皆の前で褒めないで…」という内容は、褒められることによって、変な形で目立ちたくないという子供の訴えです。集団の状況によっては、それが嫌がらせ、いじめ等にもつながる可能性もあるからです。特に思春期になるとそういったことを意識する子供も出る可能性があります。

 こういったことについて心理学的、教育方法論的に考えていくと「褒めること」は基本的には間違ったやり方ではありません。褒めることで、集団の中で良いモデルを示すことにつながります。望ましい姿を示すことで、他の子供もそれに向けて取り組みやすくなります。また、褒められた子供も自分の取組みを肯定的に評価されたことでさらにそういったことに取り組む意欲が高まります。「個」においても「集団」においても良い影響を与えることが多いです。

褒められることで自己肯定感が高まる

 私自身、小学校の教員のころ、事あるごとに子供を褒めていました。何か問題を抱えている子供ほど、褒めるようにしていました。何らかの問題を抱えている子供はそれまでの生育の中でどうしても叱られることが多かったと思われます。そういった子供に対してできる限り褒めることを続けました。特に出会いの時期である4月には、少し無理をするくらいで褒めるところを見つけ、褒めるようにしていました。子供は褒められることで、自己肯定感が高まります。また、そういったことと関連し、情緒が安定してきます。信頼関係の構築にもつながります。そういった状況が続くと、小さなトラブルが起こりにくくなります。私はそういった状態を「褒めしばる」と表現していました。その子供を褒めることを続けることで、それがその子供を覆うような感じになり、変なこと(トラブルのきっかけになるようなこと)が起こりにくくなるような状態です。

 そういったものと逆の状態が「パワハラ的指導」等です。教師が叱責する等、子供に強く威圧的に関わることによって集団を方向付けていくやり方です。怖い先生のクラスが一見きちんとしているというものです。それらは「恐怖の条件付け」なので、その条件が外れてしまえば、子供がきちんとできなくなってしまうことがほとんどです。こういったやり方が望ましくないのは何となくわかると思います。

少数の意見に振り回されないことも大切

 今回のようなことで気になることが「1つの意見で多くのことを変えてしまうこと」です。褒められることに違和感を抱く子供がいたとします。そういった子供や親から何らかの訴えがあったからといって、やり方を多くを変えてしまうということは違うように思います。訴えてきた子供にはそれなりの配慮をしつつも、他の子供にはたくさん褒めていくということをしていくべきでしょう。

 学校に訴えのあった1つのクレーム、苦情等によって取組み方が大きく変わってしまうことがあります。クレームが1つだったということはそれ以外の人は「概ね問題がない」、もしくは「良かった」と感じていると思われます。大多数の肯定的な意見があるにも関わらず、極少数の意見だけで全体の方向性を決めていくことに違和感を抱きます。少数の意見を大事にするということはもちろん大切なことなのですが、その少数の意見(声が大きいことが多い)にあまりに振り回されることのないようにしていくことも大切なことだと思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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