親子で学ぶ水と自然と人のつながり…J-POWER「エコ×エネ体験ツアー」に密着

公開日時:2019-09-19 11:15:06  
カテゴリ:教育イベント/小学生

お土産も思い出もたくさんいただいたJ-POWER「エコ×エネ体験ツアー」
お土産も思い出もたくさんいただいたJ-POWER「エコ×エネ体験ツアー」
 毎年小学4年生から6年生の親子ペアを募集し、1泊2日の旅へ無料招待するJ-POWER(電源開発)の「エコ×エネ体験ツアー」は、さまざまな企業が夏休みに子ども向けに開催する体験イベントのなかでも一線を画す濃密なプログラムだ。

 発電所やダムの見学、大自然探検、科学実験、食事、宿泊を含むすべてのプログラム参加費が無料(集合・解散場所までの交通費を除く)とあって、抽選倍率が10倍以上となるのも納得だ。

小川大介先生に聞く体験ツアーの魅力

 人気の体験ツアー魅力を探るとともに、学習、受験、子育て関連の著書も多く、「かしこい塾の使い方」主任相談員で中学受験指導のカリスマである小川大介先生に、親子体験の効果やその生かし方などについてお話をいただいた。

小川大介先生の<五感で学ぶ体験型学習>のススメ

 人は、年齢を重ねるにつれて「言葉で学ぶ」ことに慣れていきます。学校も、塾も、言葉で教えられます。そして私たちは、幼少期は自然に行えていた「体を通した五感の学び」を忘れていきます。言葉での学びは、定まった情報を短時間で大量に伝え理解するのに適している一方、「答え」をそのまま受け取ることになりやすいという一面ももっています。多様な価値観をもつ人々とつながりながら、自ら考え自ら行動することが重視される今の社会において、五感を用いた「体験の学び」に注目が集まることは必然なのでしょう。

 中でも、親子で参加する体験ツアーには特別な魅力があります。親自身が五感の学びを取り戻せるからです。親自身がワクワクする、学ぶ楽しさを感じる。そのようすに子どもが触れることで、与えられる学習から自分で発見する学びの楽しさを素直に味わうことができます。

 特に私がJ-POWERのエコ×エネ体験ツアーで素晴らしいと感じたのは、自然の中で人工物に出会えるところです。世界的に教育の場でSDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、人の営みと自然との関わりを身近に感じることから、社会課題への気付きが生まれます。

 お子さんの学び(おもに言葉による)に一生懸命に関わってきた親御さんほど、最初は構えてしまうかもしれません。難しいことは考えず、プログラムに自分を委ねるつもりで、自分自身が楽しむようにしましょう。知っていることも反応するポイントも親子できっと違うでしょう。答えは必要ありません。親子で共通の体験をもつことは、これからの日常でお互いの考えを認めあう素地となってくれますよ。

 2007年から13年目を迎えた同ツアーの「身近な秘境『奥只見(おくただみ)』でブナの森にふれる!」に小学6年生の娘と一緒に同行取材した2日間で実感したのは、“子どもと一緒に学ぶ”という共通の体験を通じてこそわかる水と自然と人の密接なつながり。参加者親子を毎年楽しみに迎え入れているスタッフの皆さんのエコ×エネ体験ツアーに対する熱い思いが心にしみ、“学ぶって楽しい!”と親子で実感した1泊2日の取材旅のようすをレポートする。

 まず今回参加した1泊2日のスケジュールは以下のとおり(2019年8月実施内容。毎年プログラムは異なる)。

「身近な秘境『奥只見(おくただみ)』でブナの森にふれる!」スケジュール

1日目

 越後湯沢駅集合→バス移動→二居ダム見学→奥清津発電所で昼食→科学実験「水力発電のしくみ」を再現→奥清津発電所見学→バス移動→奥只見ダム見学→緑の学園チェックイン→夕食→夕食後の「お互いを知る時間」→ナイトハイク→夜の交流会→お風呂・就寝

2日目

 朝のお散歩→朝食→チェックアウト→遊覧船で奥只見ダム見学→銀山平キャンプ場で森を探索→ブナの森を探索→科学実験「水の集まる豊かな土」を再現→フレミングダンス→尾瀬三郎物語を即興実演→感想発表会・振り返り→バス移動→越後湯沢駅解散

 お互い短い時間でも親しみやすく楽しく過ごせるよう“大人も子どもも同級生”をモットーにキャンプネームで呼び合った2日間。文中はキャンプネームのままで紹介していこう。

<1日目>エメラルドグリーンの水が満ちる二居ダム

 家族旅行の機会はこれまでにもあったが、娘と2人きりという旅は初めて。子どもだけ参加の夏のキャンプツアーや学校の移動教室で大勢の旅経験はあるものの、同世代の親子ペアが集まるツアーというのは親子ともに初体験とあって、少々緊張しながら越後湯沢駅に降り立つとスタッフの皆さんが笑顔で出迎えてくれた。

 16組32名の参加親子とスタッフを乗せた満席の貸切バスが走り出すと、スタッフが元気に挨拶し車内は一気に和やかな雰囲気に包まれた。J-POWER広報のよーこばさんによるJ-POWERの会社紹介や、これから向かう二居ダムや奥清津発電所に関係するクイズ、見学時の注意点などを聞いているうちに最初の目的地、二居ダムと奥清津発電所が見えてきた。J-POWERは、全国約100か所の発電所から地域の電力会社等を通して全国の工場や家庭に電気を送っているという。

貸切バスの中ではダムや発電所に関する解説やクイズで盛り上がった

 ダムというとコンクリートの塊の大きな壁が思い浮かぶが、見えてきたのは岩が積み重ねられた大きな山のような壁。この地を切り開いたときに削った岩を利用した「ロックフィルダム」と山々の美しい風景に思わず見惚れてしまう。坂道を上っていくと車窓の向こうは山の谷間に美しく映えるエメラルドグリーンの水が満ちるダムが見えてきた。青緑色の理由はこの地域の温泉の成分(硫黄泉)が含まれている影響によるものだそう。「すごい!」「きれい!」と感嘆の声があがった。

二居ダムの水は硫黄泉の影響でエメラルドグリーンの水

 天端(てんば)というダムの一番上に到着すると全員バスから降り、近くを流れる清津川をイメージしてつくられた天端の道を歩きながらJ-POWER奥清津発電所の藤原所長代理と高﨑さんの解説を聞いた。ダムの長さ(頂長)は280m、高さは87m、標高(満水位)は825m。大きなダム湖の総貯水量は1,830(有効貯水量1,140)万立方メートル。わかりやすいように「東京ドームの約15杯分」「学校のプール(25m×10m)の73,200杯分」と教えていただき親子ともども納得。

解説してくれたJ-POWER奥清津発電所の藤原所長代理

 目の前に広がる二居ダムは「下池(したいけ)」で、さらに高い位置にカッサダムという「上池(うわいけ)」があり、落差は470mもある。日本最大級の揚水式発電所「奥清津発電所」では、工場や家庭で電気をたくさん使う昼間はこの上池から下池へ水を落として水車を回転させて電気を作っている。電気をあまり使わない夜間にはほかの発電所の発電した電気を利用して下池から上池へ水をくみ上げて翌日の発電に備えている。揚水発電は、大容量の場合は貯めることができないという特質をもつ電気を、昼間のために水の形で夜のうちに貯めているというわけだ。

<1日目>人々の暮らしのために電気を作る奥清津発電所

 奥清津発電所の会議室に移動してこの地域の名物弁当「開高めし」を食べた後は、水力発電を実際にやってみる実験体験タイム。子どもたちの心をわしづかみにするドクターの軽快なトークで始まった科学実験ショーでは、子どもたちが「雲」「水」「司令塔」を演じて、位置エネルギーから電気がつくられるようすを五感で表現し盛り上げた。

お昼は名物の開高めし

 ダムに見立てたペットボトルから水を送り出す司令塔がスイッチオン。水圧鉄管に見立てた透明ホースに勢いよく水が流れる。水のエネルギーによって発電所に見立ててつくられた小さな発電機の水車が回転。回転の力=エネルギーが、コイルの側で磁石を動かすことで誘導電流が発生。電磁誘導で電気が作られライトが点灯!

水力発電の仕組みを実験体験から学ぶ

 昭和53年に発電運転を開始した奥清津発電所と平成8年に発電運転を開始した奥清津第二発電所の2つの発電所を合わせてOKKY(オッキー)という愛称で、新潟県湯沢町の地域の人々に親しまれている。実験体験で仕組みを学んだあと奥清津発電所に潜入し本物の大きさと迫力を体感するために移動した。

 奥清津発電所では160万キロワット、約50万世帯分の電力が作られ山々を越えて東京方面へ送られている。その距離は約200キロメートル。越後湯沢から東京駅間は新幹線で約1時間30分の時間がかかるが、電気は光と同じ速さ(1秒間で30万キロメートル)で届く。

奥清津発電所見学はこのトンネルからスタート

発電機組立フロアには発電機カバーがポコポコと並ぶ。この中、下に発電機、ポンプ水車などがある

水車室フロアでは水車軸、ポンプ水車など重厚な部品の迫力に圧倒される

子どもたちは見学用の資料にメモを取って学んでいた

水の流れる力を回転する力に変える水車ランナの模型

OKKYの敷地内には実際に使われていた巨大な水車ランナが、アートオブジェのように展示されていた

 発電所見学の後は、上池に貯めた水を発電所に送り電気を作るという重要な役割を果たす「水圧鉄管(すいあつてっかん)」や資材を運ぶために作られた搬入路「水の路」に潜入。

「水の路」の中は13度。長袖の上着を羽織らないと寒いくらいの気温だ

真っ赤な大きな輪は放水路のコンクリート打設時に使った移動式の型枠「セントル」。電気をつくるための大工事を想像しながら進む

解説してくれたJ-POWER奥清津発電所の高﨑さん

ついに到着した水圧鉄管! 実際に使われているものの一部の4.4mがむき出しになっており、見学に訪れた人が触れ、そのパワーを感じられるようになっている

触ってみるとひんやり

資料館では展示のほか、オリジナルのプリクラを撮影するなど親子で楽しむことができた

 奥清津発電所の会議室に戻りキャップの解説で水の力、電気の力を再確認。「電気は貯めておけないので、活きのいい電気を今、皆さんは使っています。家に帰ってコンセントを差し込むとき、その向こう側ではいつも電気が安定して供給できるよう暮らしを支えている人たちがいることを少し思い出してくれると嬉しいです」というキャップの言葉で締めくくられ、奥清津発電所を後にした。

電気は光と同じ速さ

 奥清津発電所は冬になると雪が3m以上積もるそう。この二居ダムは常に水を動かしているので凍ることはないのだそうだ。

<1日目>奥只見ダム〜緑の学園へ

 ダムカードやOKKYのぬいぐるみなどお土産をたくさんいただき次は奥只見へ移動。再びバスに乗り込みダム開発のために作られた22キロ続くシルバーラインを(なんとそのうちトンネルは18キロ)クイズを楽しみながら抜けると、奥只見湖に到着。二居ダムとは違う重力式コンクリートダムは大きく総貯水量は6億トン。人造湖としては日本最大級で、小河内、黒部ダムの約3倍だ。新潟県と福島県の県境がダムの中心部で、ダムの高さは157メートル、長さ480メートル、水位標高は満水時750メートル。冬になると最大積雪深は4〜5メートルにもなる地域にある。

 天候の都合で天端を歩くことはできなかったが、「あ!送電線だ!」という子どもたちの声があがり、山々の間をつなぐ送電線を眺めながら、静かに水とエネルギーを感じる時間となった。

人造湖としては日本最大級で、小河内、黒部ダムの約3倍もある奥只見湖

<1日目>ナイトハイク〜夜の交流会

 奥只見ダムからほど近い宿泊先「緑の学園」は奥只見丸山スキー場内にある施設。夏は林間学校や合宿、冬はスキー客の宿泊に利用されているとあってとても広い。部屋に荷物を置くとすぐにお楽しみの夕食の時間に。同じテーブルに座ったメンバーで、お互いの小学校の修学旅行の行き先や、運動会の話題などで和気あいあい。賑やかな夕食タイムとなった。

魚沼地区とあってお米はもちろん魚沼産。お肉も野菜も地元の食材にこだわったメニューは白米に合って美味しく、おかわり続出

 夕食後の「お互いを知る会」ではスタッフの楽しいダンスで盛り上がり、全員が参加動機や楽しみにしていることなどを交えて自己紹介し合った。「娘をリケジョにしたい」「倍率が高いなんて知らずに応募したら当ってラッキーだった」「自宅の近くに発電所があるので気になった」など動機はさまざま。

夕食後の「お互いを知る会」ではダンスや自己紹介で盛り上がる

 食休みが終わると夜の世界を散歩するナイトハイクへ。小雨も降り出し参加も自由だったが多くの参加者が集結。暗闇で生きる生き物は何を頼りに活動しているのかを想像しながら、自分の足音、葉に落ちる雨音、虫の声に耳を澄ませ、夜に活動する生き物たちの世界を感じる体験となった。暗闇をじーっと見つめて待つとホタルの幼虫の小さな光も見えた

暗闇の中で五感で自然を感じるナイトハイク

 ナイトハイクから戻ると食堂で夜の交流会。こちらも自由参加だったが、子どもたちも親たちもスタッフも大勢集まり、お菓子を食べたりジュースを飲んだりしてリラックス。科学の不思議をドクターに質問したり、J-POWERオリジナル エコ×エネかるたで白熱の試合を繰り広げたり、朝からびっしりのスケジュールにも関わらず終了時間まで楽しんでいた。

関西弁で盛り上げるドクターを囲んでおしゃべりタイム

白熱のエコ×エネかるた大会! かるたの札はエコ×エネ体験ツアーの参加者たちが考えたもの

 大浴場でゆっくりお風呂に浸かった後は、娘がぴったりくっつけて敷いてくれた布団で並んで就寝。娘はもっとも楽しみにしていたナイトハイクを思い出しながら「ここに修学旅行で来られたら肝試ししたいな! 真っ暗で盛り上がりそう!」「スキーにも来たいなぁ…」「ダムの水の色綺麗だったね」など、1日の思い出を振り返り、まだまだ喋りたくて眠れないようす。こんな風に枕を並べたことは今まで何回あっただろうかと思い起こしながらいつのまにか眠りについていた。

1日目終了、お布団を引いて就寝

 2日目は奥只見湖を遊覧船で移動し銀山平へ。親子の感想とスタッフの熱い思いをインタビュー。

<2日目>朝の散歩〜朝食

 朝食前に朝の散歩へ。こちらも自由参加だったが朝6時には大勢の参加者が集まり、前日の暗闇の中のナイトハイクで通った道と同じ道を辿った。ここは昨日閉じたクローバーを見た場所、ここはホタルの幼虫がいた場所、など明るくなった朝に教えてもらうと「え?そうだったんだ!」と驚く。光があることで見える世界の美しさに感謝しながらの朝散歩となった。

エコーはどこから聞こえるか? 都会ではできない体験「ヤッホー!」と朝から大声で叫ぶとこだまが返ってきた

草笛はコツがいると教えてくれたまーりーさん。あちこちで心地よい音が聞こえてきた

この葉っぱをちょっと食べてみて、と言われてかじってみると「ブドウの味!」いう声が。実がなっていなくても味でブドウの仲間の葉だとわかる

 美味しい朝食をたっぷりいただき、部屋を片付けて緑の学園を後にした。

<2日目>遊覧船で釣り人憧れの奥只見ダムを縦断

 向かった先は奥只見ダムの遊覧船乗り場。巨大なイワナの宝庫として知られ、ヤマメ(山女)、虹鱒(ニジマス)、桜鱒(サクラマス)などさまざまな魚が釣れることから釣り人の聖地として愛されている奥只見湖に優雅に浮かぶ白いファンタジア号は結婚式や音楽会の会場にもなるそうだ。

 銀山平へ向かう40分ほどの乗船時間の船内ではオリジナルのビンゴゲーム大会が開催された。自己紹介、握手、見つけたものなどでビンゴを目指すのでおのずと全員が話しかけたり動き回ったり。湖に流れる流木、岩壁を流れる小さな滝、飛翔する鳥を眺めながら楽しい時間を過ごした。

全員参加のオリジナルビンゴゲーム

デッキに立って爽快な気分を味わう

カッコいい帽子をかぶり、舵をとる子ども船長体験

美しいファンタジア号で銀山平キャンプ場に到着

<2日目>尾瀬三郎像の前で自然で遊び、ブナの森へ

 ここでもダムカードとファンタジア号カードを受け取り、船を降りて向かった先は森の中。可愛いお地蔵さんの前を過ぎると森へ入っていく小径が続き、進んでいくと尾瀬三郎の石碑を囲んだ森の中の広場にたどり着いた。ここでは葉っぱを使ったじゃんけんをするために各自が気になる葉っぱを3枚採集し、一番細い葉っぱを選んで出し合い勝負したり、葉っぱの繊維を利用し、ちぎっても落ちない手品をするなど、自然を使った遊びを楽しんだ。

気になる葉っぱも親子でこんなに違う

遊びに使わせてもらった葉に感謝して皆で葉っぱを土に戻す

細い細い糸でつながっている

 親世代も子どももあまり経験のない自然遊びを満喫したあとは前日の夜の交流会でも楽しみにしているという声が多かった「ブナの森」へ向かった。足元に気をつけながら森の奥深くへ進んでいく間も、朽木から染み出る水をしぼったり、ブナの実を拾って中に虫がいるのを発見したリ、葉についている雫を集めたり、自然の恵みをひとつひとつ丁寧に確認。大人が細々と指示をしなくてもお互いの雫を集めて楽しむ子どもたちの姿に、共通の体験ができる環境さえあれば子どもたちは自然と仲良くなり、楽しみを見つける“遊びの天才”なのだと感じた。

 到着したブナの森は根元が少し曲がり、白色が混じる独特の幹の色が奥深くまで続き美しい。この根元が曲がる理由は積雪の重みに耐えようと、折れないようにと頑張っているからと教えていただいた。あらためてブナの木1本1本を見ると、なぜか愛おしくたくましい子どものように見えてくる。

ブナの森に到着

 ブナの周囲の土はふかふかと柔らかい。落ちた葉と木の実を動物や土壌生物が食べることで分解され、雪解け水が沁み込み豊かな土へとなっていく。毎年繰り返されていく命の循環を五感で感じるために親子でお気に入りのブナの木を探し寝そべってみた。人々の暮らしを支える水が当たるのを顔で感じ、背中には木の幹と土を感じる。雨音が聞こえ、鮮やかな緑色の向こうに空を見る。葉と水と土のにおいを吸収するように深呼吸をして五感でブナの森を感じる時間は、森の一部になれたような温かく静かなひと時だった。

娘が選んだブナの木はこの子

隣に寝そべると葉と空の色のコントラストが美しい

ひと時の感謝をブナの木に

<2日目>科学実験と振り返り

 ブナの森から銀山平キャンプ場の屋内施設へ移動して昼食後は最後の科学実験(晴天のときは屋外で実施)タイム。ドクターが登場すると皆は何が始まるのだろう? とワクワクしながら注目した。

 ひとりひとりに渡された2つの容器には、学校の校庭のような近い粘土質に近づけた素材と、ブナの森の土の性質に近づけてつくられた素材がそれぞれ入っている。それぞれに水を流し透水性を知る実験だ。ブナの森の土の性質に近い素材のほうがたくさんの水を早く通し水を貯めることができた。

全員の水を集めてバケツの中にダム湖ができた

みんなの水から電気ができた

ドクターご指名の親が演じる尾瀬三郎の悲恋物語の舞台も即興上演。感情たっぷりの名演技を見せてくれた親に子どもたちは大喜び

フレミングダンスもぜひ覚えてと踊るドクターとやっさん

親子で深まる探究心

 科学実験が終わると、皆でこの2日間を振り返る時間。配られたブナの木のカードにそれぞれの感想やブナの木へのメッセージなど、思い思いの言葉を書き込んだ。親子でカードの内容を発表した後は、手作りのタペストリーに貼り付け、さっき寝そべってきたばかりのブナの森を再現した。

思い思いの言葉が集まったブナの森。カードは最後にはずして各自が思い出に持ち帰った

 参加した子どもたちは4年生から6年生。あと少しすると親と2人きりで出かける機会も少なくなっていくかもしれない。普段はお互いを知るための時間をあえてもつことも照れ臭いもの。親子ペアでツアーに参加したことで新たな気づきがあったのは子どもだけではなかったようだ。3組の親子にツアーの感想をお聞きした。

ゆうこさん&こうしろう親子

 「ダムについて予習してから参加したら、もっと楽しめたのにと反省しています(笑)。これからも息子とまた一緒にどこかへ体験に行きたいという思いもありますが、息子ひとりでもどんどんこういった体験ツアーに参加してほしいです。」(ゆうこさん)

 「一番楽しみにしていた遊覧船はとても楽しかったです。ブナの森も木の実を拾ってなかに虫を見つけたり、葉に水を貯めたり自然に触れてとても楽しかったです。食事も美味しくて、良い2日間でした。」(こうしろう)

なお&りったん親子

 「普段の生活だと雨で合羽を着て移動するのって面倒だなと思ってしまうのですが、今日は雨にぬれてもまったく気にならなくて、ブナの森で寝そべって気持ちよかったです。ブナの木の幹を伝う水の路も見ることができました。兄弟がいるので娘と2人きりは初めてでした。家族でダムに来ても専門知識はわからないのでとても貴重な経験ができました。」(なお)

 「葉っぱじゃんけんが楽しかったです。ブナの森のルートではヒミズが通った穴を見つけたんです。指で確認したらちゃんと穴が続いていました。発見の多い2日間でした。」(りったん)

なおや&かりん親子

 「仕事柄、興味がある分野だったのでとても勉強になりました。子どもよりたくさん質問してしまいました(笑)。かなりハードスケジュールでしたがどの体験も面白くて、体力的に疲れを感じていても精神的には充実していて全然疲れていないんです。皆さんも笑顔で、誰も疲れた顔をしていないのはスタッフの皆さんのプロフェッショナルさ、熱意のおかげだと感じました。」(なおや)

 「ダムを2つも見ることができて、欲しかったダムカードももらうことができてとても嬉しかったです。カジカガエルがいたり、遊覧船に乗ったりしたことも楽しかったです。自然と電気がつながっていることがよくわかったので、使いすぎないように大切にしたいです。」(かりん)

伝わるスタッフのエネルギー

 自然と電気と人とのつながりが伝わった体験だったのは笑顔の親子のようすから明らかだったJ-POWER「エコ×エネ体験ツアー」。13年間毎年変わらぬ笑顔でツアーを支えているのはまさにそれぞれの分野のプロフェッショナルであるスタッフの皆さんの熱い思いから作られるエネルギーだ。

よーこばさん(J-POWER)

 「J-POWERの人たちは電気のことは詳しく伝えられても、楽しくわかりやすく話すのは難しいと感じています。大切なメッセージが伝わる楽しく安全なツアーをつくるためにはスタッフもご参加の皆さんも、誰ひとりとして欠かすことができないんです。」

なんちゃん(J-POWER)

 「社内で参加募集があったので志願して参加しました。普段は机に向かっているので外で思い切り子どもたちと過ごすとリフレッシュできて楽しいです。ツアーが終わるとまた普通の会社生活に戻るので名残惜しいです。」

かもさん(日本環境教育フォーラム)

 「文化や年齢さまざまな違いがあったとしてもこういった共通体験をつくることで同じ問いかけができます。知識なしで参加できる体験先行型の学びはそこが良いところです。体験から学び共感し、協働する学びはこれから日本でもっと必要になってきます。そして学びの次にすることは考えて行動すること、アクションです。」

ドクター(高倉環境研究所・元ジェイペック)

 「このツアーの立ち上げの前から近隣の小学校で体験教室を開いていました。このツアーには毎年九州から飛んできて参加しています。参加者の感想に『ドクターが面白かった』って書いてあると嬉しいんです。面白いって感じてもらえた、ちゃんと印象に残っている、楽しかったんだとわかるんです。ロングランのミュージカルのようにずっと続けていきたいです。家族旅行はあっても親子1対1で過ごす旅行はなかなかないので、親子で違う側面が見えてくると思います。」

キャップ(J-POWER)

 「このツアーの準備室から13年間ずっと続けてきました。昨年とても嬉しいニュースがあったんです。小学生のときこのツアーに参加した女の子が、そのときの体験が楽しくて理工学部に進んだと、大学生向けのツアーに参加してくれたんです。大学生向けのツアーは火力発電所と水力発電所に行く2泊3日のツアーで、もちろん親はいません。学生同士でディスカッションしたり、SDGsや新しいエネルギーについて考えたりします。今日参加した子どもたちが大学生になったときにも今日を思い出してくれると嬉しいです。また会える日を楽しみに待っています。」

しげさん(J-POWER)

 「みんなのブナの木のカードの言葉がとても嬉しいです。この気持ちを家で家族に伝えて、学校でもお友だちに伝えてほしいです。エコ×エネ、自然と人のつながりがもっと増えるように伝えてほしいです。人と人のつながりが社会をつくり、変えて、持続していく。ずっとつながっていくことを願っています。」

おのの、まーりー、ぱりんこ(キープ協会)

 「皆さんに出会えて、自然を考える人、エコ×エネを考える人がまた増えました。仲間が増えて本当に嬉しいです。元気!電気!勇気!」

 13年分の思いがつながったエコ×エネ体験ツアーはまた来年、再来年へとつながっていく。募集開始は毎年5月の上旬ごろ。探究心溢れる小学校4年生から6年生のお子さんのいるご家庭は、まずは申し込みをするというアクションをお忘れなく。
<田口さとみ>