大日本印刷(DNP)は、東京大学生産技術研究所次世代育成オフィス(東大生研ONG)の指導のもと、高校生と社会人が共に学び合う「STEAM型次世代育成プログラム」の基本モデルを開発した。このプログラムは、高校生が社会で働く際に必要な「自ら問いを立てるスキル」を習得するための授業カリキュラムを、企業の社員と共に設計・運営するものである。学生のSTEAM型探究学習と社員の人材育成を同時に実現し、「Society 5.0」に不可欠な人材の創出を目指す。
同プログラムの開発背景には、国内外で社会課題の解決に向けて自ら問いを立て、個性を生かして答えを出す能力が求められている現状がある。教育現場では、個々の興味に基づいた探究学習が重視され、企業との協業による体験学習が増加している。DNPと東大生研ONG(Office for the Next Generation)は、企業の認知拡大や未来の顧客創出につながる職業体験に加え、事業推進や社会課題解決のために企業が求める人材を育成する学習プログラムを、企業と学校の双方の視点で作ることの重要性に着目した。
プログラムの内容は、高校生と社会人が互いに学び合い、新しい視点を得るためのものである。「デザイン思考」を活用し、多様性への理解を深めるユニバーサルデザイン(UD)の視点から、身近な困りごとや社会課題を捉えることを重視している。高校生は自ら問いを立て、その問いに対する具体的なアイデアや製品・サービスを考え、社員や高校生同士からフィードバックを受け、さらなる問いに進むことを実践する。
企業の社員はメンターとして学びの場に参加し、高校生の興味・関心に寄り添ってチーム学習を促す。社員は教育現場で学びの実践に関わり、高校生との対話を深めることで、社会課題解決に向けた多様な気付きを生み出す。メンターとなる社員は、コーチングの理論や手法を事前に学び、プログラムの実施に伴走することで、リーダーシップ力やチームマネジメント力を養うことができる。
このプログラムは、企業の社員研修としても活用が想定されている。職業体験ではなく、企業の採用の目線で自社の事業推進や社会課題解決に必要な人材にフォーカスしてカリキュラムを設計する。導入を希望する学校と企業をマッチングさせ、授業の一環として展開する。
2024年7月から9月にかけて、プログラム開発に向けた実証実験が行われた。DNPグループ社員と東京大学の大学院生がメンターとなり、関東エリアの高校生が参加した。基調講演には東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎教授、視聴覚障害体験ワークにはGRICの高橋純也代表が講師を務めた。参加した高校生からは、「社会課題を見つけ、アイデアを形にする経験が初めてで貴重だった」との評価があった。
今後は、多様な業界の企業との協働による実証実験を行い、高等学校等の授業での活用に向けた単元目標設定や評価の整理を進める。2025年度中には、DNPから各企業に向けて企業研修プログラムとして提供を開始する予定である。また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)において、異年代・異文化での協働による社会課題解決の実現に向けた「STEAM型アイデア創出」のワークショップを予定している。
STEAM型次世代育成プログラム、DNPと東大が開発
公開日時:2024-12-05 14:16:22
カテゴリ:教材・サービス/授業
- 「STEAM型次世代育成プログラム」の基本モデルについて
- 画像出典:DNP
<佐藤愛>
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